『ワンダー Wonder』 について

7月18日に発売される『ワンダー Wonder』(R・J・パラシオ 著、 中井はるの 訳、ほるぷ出版)のダイジェスト版を読んだ。

人の「強さ」と「弱さ」と「優しさ」について、いろいろな角度から丁寧にやさしいタッチで描いた心温まる小説だった。

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sentinorteプラグインでEvernoteからWordPressに投稿する

「sentinote」はEvernoteのノートをWordpressのエントリに投稿してくれる便利なWordpressプラグインだ。Markdownにも対応している。

しかし、残念ながら日本語に対応していない。ノートに日本語が記述されていると、そこから下はエントリに反映されない。しかも、2014年で作者がアップデートを停止してしまっている。

しかたがないので、自力でsentinoteを改造して、無理矢理日本語対応させた。

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さくら学院の「今だけ」感が凄い話

2月15日、恵比寿のリキッドルームで行われたさくら学院のバレンタイン・ライブの昼の部に言ってきた。
さくら学院は、福山雅治やPerfumeを擁する芸能事務所アミューズ所属の、学校をコンセプトにした小中学生によるアイドルグループだ。最近、全世界で人気が沸騰しているヘビメタ・アイドルユニットBABYMETALの母体となったグループでもある。

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アニソンは人類をつなぐ

アニソンは人類をつなぐ

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古今の人気アニソンと歌手を結集させた神イベント

2014年11月16日(日)、東京お台場のZepp Diver Ciry にて開かれたアニソンライブイベント、“中川翔子 PRODUCE LIVE 「アニソンは人類をつなぐ!」 supported by dアニメストア”の第二部に行ってきました。

出演は、中川翔子、平野綾、田村直美、ささきいさおの4人+吉田尚記(ニッポン放送アナウンサー)。

タイトルのとおり、しょこたんこと中川翔子がキャスティングと選曲を担当しており、80分という短いイベントではありましたが、アニソンの歴史に残る名曲が次々と披露され、「神イベントってこういうのだよね」と納得の内容でした。

以下、セットリスト&極私的解説 続きを読む アニソンは人類をつなぐ

パソコンの進化が止まったとき、あなたのやるべきこと

新型iMacが象徴する、パソコンの進化の限界

 本日(2014年10月17日)未明、Appleの新しいデスクトップパソコン、iMacとMac miniが発表され、即日発売が開始された。
Appleが、コンシューマ向けのデスクトップパソコンを発表会で紹介するのは、ずいぶん久しぶりだ。最近のAppleの主力はiPhoneやiPadなどのモバイル製品で、その次がノート型のMacbook。デスクトップパソコンである、iMacとMac miniもそれなりに売れているのだが、かつて一世を風靡したハイテク製品だったiMacは、いまでは平凡な枯れた製品になってしまった。

 今回、久しぶりにメディアの前でデスクトップMacが発表されたのは、超高解像度ディスプレイ(Retina Display)の搭載という久しぶりのトピックがあったからだ。それも、今年の家電やITのキーワードだった4K(3840×2160ピクセル)を大きく超える、5K(5120×2880ピクセル)という圧倒的なスペックを搭載してきた。

 他メーカーが4Kディスプレイの新製品を次々と投入してくるのに対して一回り大きな5Kディスプレイを搭載したことは、単純なスペック比較において勝っているだけでなく、4K画質を縮小せずに編集できるので、4Kビデオを編集する機会が今後増えるであろう映像のプロにとっては非常に魅力的だ。

 新型iMacのもうひとつの改良ポイントは外部機器との入出力スピードで、従来のThunderboltよりも2倍速くなったThunderbolt2を搭載した。これも巨大な4Kビデオデータを読み書きするときには便利なはずだ。
逆に言えば、4Kビデオの編集を行わない一般の人にとっては、5Kのディスプレイを積んだ新型iMacは、数字が凄いだけの意味の分からないマシンだとも言える。

 最近ようやくYouTubeでフルHD(1920×1080 ピクセル)の動画が少し増えてきたけど、iTunes Storeで販売されているミュージックビデオがいまだにDVD画質(720×480 ピクセル)であることを考えれば、4Kの映像コンテンツが潤沢に供給されるのはまだまだ先の話であり、5Kの新型iMacは映像のプロや一部のマニア向けの製品ということになるだろう。
そのためか、今夏の新型iMacでは5Kディスプレイモデルのほかに従来と同じ2K(2560×1620 ピクセル)モデルも残されている。一般の人はこちらを買えということだ。

パソコンはもう型落ちでも構わない

 この原稿を書くのに使っている僕のマシンは2011年5月に発売された27インチのiMacだ。もうすでに3年半前のマシンだが、性能的に不満を感じることはない。昔のパソコンは3、4年経つと機械的にはなんの問題もないのに、スペック面で新機種と差が開きすぎて、最新のOSやアプリが利用できず、仕方なく新機種に買い替えるというサイクルを繰り返してきた。そのおかげでパソコン産業は急拡大できたともいえる。

 たとえば10年前だと、2001年春に発売されたiMacと2004年夏に発売されたiMacの最上位機種では以下のように差がある。

2001年春(2月21日発売)
– CPU:PowerPC G3 600MHz
– ディスプレイ:15インチCRT・1024×768ピクセル

2004年夏(8月31日発売)
– CPU:PowerPC G5 1.8GHz
– ディスプレイ:20インチ液晶・1680×1050 ピクセル

 なんと、CPUはG3からG5へと2世代も進化し、動作クロックも3倍になっている。ディスプレイもブラウン管が液晶になり、ピクセル数も約2.2倍になっている。

 いっぽう、我が家のiMacと本日発売の新型iMacの2Kモデルの最上位機種の比較はこうだ。

2011年春(5月3日発売)
– CPU:Core i7(クアッドコア)3.4GHz
– ディスプレイ:27インチ液晶・2560×1440ピクセル

2014年秋(10月17日発売)
– CPU:Core i7 (クアッドコア) 3.5GHz
– ディスプレイ:27インチ液晶・2560×1440ピクセル

 我が家のiMacはAppleStoreのBTOで高速なCPUに変えたので、最新のiMacも同じくBTOで高速なものを選択したが、なんとCPUは0.1GHzしか高速化していない。

 この3年半の間、CPUはまったく進化していないのかといえば、省電力化を中心に改善が図られてきた。とはいえ、一番肝心の処理能力はあまり変化していないのだ。

 ディスプレイについても、視野角や省電力などの改善が図られている。また、なによりボディが変わった。正面から見るとほぼ同じだが、新型はDVD-Rドライブを外付けにして、非常に薄型化され、廃熱も少なくなっている。iMacは製品としてちゃんと進化している。

 しかし、昔のように古いマシンでCPUパワーやメモリが足りなくて新しいOSやアプリが使えないということが起きにくくなってきたのも事実だ。

 iMacより遙かにCPU性能の低いMacBook Airの2012年モデルも使っているが、こちらに最新のMac OS X Yodemiteをインストールしてみたが、やはり、なんの問題もなかった。

 つまり、型落ちのパソコンを使ってもあまり問題のない時代になったのだ。

進化が止まったのは喜ぶべきこと?

 1997年ごろ、Appleが倒産寸前の危機にあった頃、ジョブズとともにAppleを創業したスティーブ・ウォズニアクがニューズウィーク誌に寄稿した。話題の多くはコンピュータと教育の問題についてだった。

 米国の小学校にパソコンを導入するとき、全国一斉に導入されるわけではなく、毎年決まった数の学校にだけ導入される。すると、導入された年度によって、学校のパソコンの性能が違いすぎて、均質なコンピュータ教育ができない。当時、ウォズは「パソコンの進化が止まらない限り、この問題は解決しない」としていた。これはたぶん、日本の小学校でも同じだろう。

 いまや、コンシューマレベルで使うには、パソコンもスマホもタブレットも十分な性能に達した。処理能力面での進化が止まったのはパソコンだけではない。今年の目玉となったiPhone 6のCPU処理能力は前年のiPhone 5sから25%しか向上しなかった。25%は小さいとは言えない数字だが、それまでのiPhoneが毎年2倍、3倍という驚異的な性能UPをしていたことを考えると、スマホの進化も徐々に穏やかになってきたといえる。

 1977年にAppleIIが発売されて以来、猛烈な勢いで増してきた個人向けコンピュータの処理能力が、ようやく落ち着きだした。ソフトウェア面でも使い勝手はどんどん良くなっているが、マイクロソフトOfficeに代表されるような事務処理系のアプリやサービスの進化も以前のような革命的な発明は見られなくなった。

ハードウェアではなく、人間が進化する番がきた

 パソコンやスマホはもはやマニアのオモチャでも専門家の道具でもなく、小学生から老人まで誰もが日常的に使う道具になった。

 しかし、誰もが使える道具になった一方で、コンピュータの持つ本来の力が利用されず、単に電気仕掛けで動く紙と鉛筆としてしか使われていないことも多い。

 仕事で日常的にExcelを使っているのに、自動集計のやり方が判らずに、電卓でマス目を集計して記入している人が現実にいる。データの再利用性を無視した、ExcelやWordのテンプレートが氾濫している。メールの宛先でCCとBCCを間違えないように、隣の人に確認して貰ってから送っていたりする。

 コンピュータの根本的な力は「自動化」にある。そして、人間の意志の力は有限であり、使えば減って休息しないと補充されない。1日の限られた時間をつまらないルーチンワークに使えば、別の仕事で創造性を発揮する分が減ってしまう。

 だから人間は、生産性を上げるためにサボれるところはサボすべきなのだ。そのサボるための道具としてこそ、コンピュータの自動化の力が使われるべきだと思う。

 パソコンの進化が停滞してきたいまこそが、みんなが知識を共有して、新しい力を手に入れるときなのだ。

 ちなみに、有限な意志の力というのは、知的作業だけでなく肉体作業でも共有しているそうだ。なのでホワイトカラーだけでなく、ブルーカラーの人も、できる限りコンピュータの自動化の力を使って、積極的にサボる価値がある。

 ただし、コンピュータの自動化の力を使うには、少々の勉強も必要だ。そこで従来なら、「コンピュータ教育」「プログラミング教育」という話になるのだが、それも違うと思う。勉強が好きな人はあまりいない。しかし、人間というものは、勉強のための勉強は嫌いでも、なにか目標を達成するためなら、意外と進んで勉強するものだ。なので、大事なのはひたすらコンピュータを「使う」ことだと思う。

 ただし、いままでのように紙と鉛筆の代わりに使うのではなく、きちんと正しい使い方を指導できる人の下で、ひたすら使って考えるのがいいと思う。

 コンピュータの自動化の力を利用する方法を学ぶのに、必ずしもプログラミングを学ぶ必要は無い。自分の抱える問題を分析し、頻出するパターンをみつけ、それを自動化できないか考える。パターンさえ見つかれば、自動化は可能だ。あとは可能だと信じて続ければ必ず自動化できる。

 いまはSNSがあるから、先生が身近にいなくても、やる気さえあればなんとかなる。もしあなたにやる気があるなら、いますぐ始めるべきだと思う。

 パターン発見と解決を繰り返すうちに、あなたはプログラミングだってできるようになっているかもしれない。

ももクロのライブに実際に行ってわかったこと(その1)

先週の8月4日と8月7日、立て続けにももクロことももいろクローバーZのコンサートに行ってきた。 そこで実際に行ってみてわかったことのメモ。
 
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8月4日(日曜日)は、新横浜にある日産スタジアムで行われたももクロの単独ライブ。収容人数7万2327人(スタンド席)という日本最大級の巨大スタジアムを使って、ももクロらしい元気なエンターテイメント・ショーが繰り広げられた。

 

ももクロがなぜこんなに急速に人気を獲得しているかについてはいろいろ説があるけど、ひとつ確実に言えるのは「予想は裏切り、期待は裏切らない」という運営の絶妙な演出にある。まずそれが今回のライブで実感できた。


僕にとっては、初めてのももクロのライブだったのだけど、実際に行くまで、日産みたいな巨大なスタジアムでライブなんて、きっとももクロの5人が豆粒みたいにしか見えないんじゃないか? と不安に思っていた。
 
そこで気になるのはステージはどんな風に組むのか? ということ。 巨大なスタジアムの端にステージを作ったりしたら、反対側のスタンド席からはそれこそ豆粒以下の大きさにしか見えないはず。だったら、いままで西武ドームなどで実績のあるグラウンド中央のステージを使うのかな? なんて想像していた。
 しかし、気になったのは事前に収容人数が「6万人」とアナウンスされていたこと。スタンドの一部をつぶしても、グラウンドをアリーナとして使えば、7万人は楽に入りそうなんだが……。まさか、グラウンド全部がステージってことはないよね?
 
そして僕の予感はある意味当たっていた。僕らの席は東側バックスタンドの1Fの比較的真ん中よりだったけど、今回のメインステージはその正面、西側メインスタンド上に作られていた。つまり正面に見えるけど、その距離はおよそ200m。やはり演者は小さくわずかにしか見えない。
代わりにバックスタンドの目の前にサブステージが設けられているのが救いで、そこで歌ってくれれば僕らの席から距離は数10m。なんとか顔の表情もわかる。

じゃあスタジアムの真ん中はどうなっていたのか? AKB48やサザンオールスターズがライブを行ったときにはシートを敷き大量の椅子をおいてアリーナ席となっていた場所は、ももクロのライブでは、緑の天然芝と周囲の陸上競技用トラックがほぼそのまま残されていた! あの青々とした芝生を見たときのショックといったらなかった。いったいなぜ、こんなステージ構成にしたのか?

その謎は、4時間半以上にわたってコンサートが進行していく中で明らかになった。テレビや新聞でご存じの方も多いと思うが、残したトラックや芝生のグランドを使って、コンサート中に陸上競技やサッカーをやってしまったのだ。それもかつて日本を代表するスーパーアスリートだった武井壮や北澤豪、福田正博を相手にももクロのメンバーが挑むという茶番が繰り広げられた。その結果は当然ももクロたちの惨敗。この巨大コンサートの主役なのに、まったく花も持たせてもらえずに。

でも、だからこそ面白かったのだと思う。俊足自慢のももクロのリーダー百田夏菜子は、武井壮に20mのハンデを付けた100m走対決で負けてしまったけど、あと10mハンデがあったら勝てていたかもしれない。でもそれをあえて、百田が勝てない距離で勝負して10種競技元日本王者の凄さを見せつけたからこそ印象に残ったのだと思う。

サッカーはもっとひどい茶番だったけど、運動神経と体力が自慢の百田夏菜子や玉井詩織が元日本代表たちにさんざん翻弄される姿こそが、スポーツの頂点の凄さをわかりやすく伝えてくれたとも言える。

ももクロのライブやTV番組の多くを手がけている演出家の佐々木敦規は、「アイドルが人を笑わせようなんて、おこがましいし芸人に失礼。だけど、人に笑われるにも努力が必要」みたいなことをどこかで言っていた。

笑いについては、もうひとつ。アニメ監督の宮崎駿は、「登場人物が馬鹿なことをして笑いをとるなんてのは低級な笑い。真面目な人がなりふり構わず一生懸命にふるまった結果が笑いを誘うのが、本当の笑い」みたいなことを言っていた。

ももクロが提供する笑いは、まさに宮崎駿が言うところの笑いだ。ろくにサッカーのルールも知らないのに超一級の元プロのボールに齧り付きに行って、あげく相手を倒してイエローカードを立て続けにくらい、怖がりながらも壁を作ってPKを必死に阻止しようとするけど、結局はゴールされてしまう。果たしてどこまで台本に書かれていたのかはわからないが、この茶番を僕らが明るく楽しめるのは、なりふり構わぬ一生懸命さをももクロが全身全霊をもって表現してくれたからだ。

 
なぜ、ももクロに惹かれるのか僕はずっと考えているのだけど、いまだに答えが決まらない。でも、きっとその理由のひとつに、ももクロが「嘘っぽくない」ところがあると思う。
 
ももクロが主役のコンサートで、元日本代表のアスリートたちがももクロのメンバーに花を持たせてあげる演出だって可能だ。というか、普通のアイドルのイベントだったら、そうしただろう。でも、そういうお約束をすっ飛ばして、生に近い、素に近いももクロのメンバー達の必死の表情を見せる。
 
また、絶対かなわない状況なのに、ももクロのメンバー達は、絶対あきらめずに全力で、しかも楽しそうに戦いを挑む。
 
ももクロといえば「全力」がキーワードだけど、その全力がフィクションを感じさせない。そこに人生の酸いも甘いも噛み分けてきたはずの大人が次々とハマる魅力がある。
 
ふと思い出したのだけど、「もも見!」という社会科見学番組でクリーニング工場を見学したとき、ももクロのメンバーが膨大なシャツの仕分けの速度を専用の機械と競ったことがあった。そもそも絶対にかなうわけないのに、ももクロのメンバーは機械に負けたあとも、「もう少しやったら勝てるかもしれないから時間を延長してくれ」と言い出して、勝負を続けた。結局、勝てなかったのだけど、その精神的なタフネスに「凄い子たちだな」とそのときも思った。
 
ももクロの魅力は、変化に富んだ楽曲の楽しさやダンスの面白カッコ良さ、ライブの躍動感など多岐にわたるけど、最終的にはあのコたちの人間性が僕たちを惹きつけて止まないんだろう。
 
ももクロを育てたマネージャーの川上アキラ氏が「カワイイ子を集めるのは簡単だけど、優しくて心が強い子を集めるのは難しい」と言ってたらしい(ソースは2ちゃんねるのまとめブログなのだが)。「優しくて心が強い子」を集めることができたのが、ももクロなのだろう、きっと。
 
アイドルとはやはりカリスマであり、カリスマをなすのは心の強さなのだ。
 
(次回に続く)
 
参考 ももクロ6万人日産スタジアムライブに布袋、猫、武井壮
 
ももクロ大暴れで6万人熱狂!豪華ゲストも続々
 
 
Jリーグ草創期のヒーロー北澤豪に果敢に向かっていく、“ももたまい”こと百田夏菜子(赤)&玉井詩織(黄)のももクロ・ツートップ(運動神経的な意味で)。【サンスポより】
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シンデレラはもういない?

またまた芸能アイドルネタである。最近の紅白に出るような人気女性アイドルって、苦労人が多い気がする。AKB48も、Perfumeも、ももいろクローバーZも、地道なライブ活動でファンを増やしてトップの座を手に入れた。声優として異例の紅白連続出場を続けている水樹奈々も、やはり歌手としては地道にライブ活動を続けてきた人だ。

昔は、長い下積み生活、苦労人といえば演歌歌手だった。それに対してアイドル歌手というのは、オーディションやスカウトをきかっけに大手プロダクションと契約し、デビューしてすぐにTVの人気番組に出て、そこで人気に火が付けば売れっ子になる。そうやって売れたアイドルたちは、一夜にしてスターへの切符を手にしたシンデレラ・ガールだった。

そこには、「実力はあるけど華はなく、地味な営業でじっくりと人気を浸透させていく演歌歌手」 VS 「実力はないけど可愛くて、事務所や大物プロデューサーやTVの力で偶像として作り上げられるアイドル歌手」という構図があった。苦労人のアイドルもいたけど、森口博子みたいに「バラドル」として人気を得ていったので、正統派アイドルとはちょっと毛色が違っていた。

昭和の女性アイドルを振り返ってみると、天地真理、山口百恵、キャンディーズ、ピンクレディー、松田聖子、中森明菜。いずれも「スター誕生!」などのオーディションを経てTVデビューを果たしたシンデレラたちだった。その後も「夕焼けニャンニャン」「モモコクラブ」、平成に入ってからは「ASAYAN」などがバラエティ兼オーディション番組として、多数のシンデレラたちを輩出した。

それが、いつの間にか紅白出場の女性アイドルは苦労人だらけである。

今はアイドル登竜門となるオーディション番組がないし、歌番組の数も減っている。そのためアイドルとして大成するためには、昔より多くの努力を必要とされるのか…と思ったんだけど、実際はどうなんだろう?

ということで、昭和のアイドルから“モモくろ”まで、トップアイドルがデビューしてから紅白初出場までどのくらいの期間を必要としたのか調べてみた。また比較のため、演歌歌手やアイドルの範疇に入らない女性アーチストも調べてみた。なお、1ヶ月単位で計算しているし、正確なデビュー月がわからない場合もあるので、多少誤差があることはご承知おきください。

 

歌手名 デビューのきっかけ メジャーデビュー 紅白出場 メジャーデビューに要した期間(A) 紅白出場に要した期間(B) A + B
天地真理 1971年6月 TBS「時間ですよ」従業員オーディション最終審査で落選。森光子に見いだされる 1971年10月 1972年 4ヶ月 14ヶ月 18ヶ月
山口百恵 1972年12月 NTV「スター誕生!」準優勝 1973年5月 1974年 5ヶ月 19ヶ月 24ヶ月
キャンディーズ 1972年4月 NHK「歌謡グランドショー」マスコットガール兼アシスタントとして結成 1973年9月 1975年 17ヶ月 15ヶ月 32ヶ月
ピンクレディー 1973年11月 ヤマハ「チャレンジ・オン・ステージ」合格、1976年12月 NTV「スター誕生!」合格 1976年8月 1977年 33ヶ月 16ヶ月 49ヶ月
松田聖子 1978年4月 CBSソニー「ミス・セブンティーンコンテスト」九州地区大会優勝 1980年4月 1980年 24ヶ月 8ヶ月 32ヶ月
中森明菜 1981年8月 NTV「スター誕生!」合格 1982年5月 1983年 9ヶ月 19ヶ月 28ヶ月
おニャン子クラブ 1985年4月 CX「夕焼けニャンニャン」内で結成 1985年7月 出場せず 3ヶ月
安室奈美恵 1992年春沖縄アクターズスクールでSUPER MONKEY’S結成 1992年9月/1995年4月(ソロデビュー) 1995年 6ヶ月 39ヶ月 45ヶ月
華原朋美 1993年「さんまのなんでもダービー」アシスタント、1994年4月 遠峯ありさとして「天使のUBUG」などに出演、1995年6月 小室哲哉プロデュースで華原朋美に改名 1995年9月 1996年 29ヶ月 15ヶ月 44ヶ月
SPEED 1995年春に沖縄アクターズスクール内で結成。1996年1月にNTV「THE夜もヒッパレ」でSPEEDと命名 1996年8月 1997年 17ヶ月 16ヶ月 33ヶ月
モーニング娘。 1997年9月 TX「ASAYAN」内で結成 1998年1月 1998年 4ヶ月 11ヶ月 15ヶ月
浜崎あゆみ 1993年4月 EX「ツインズ教師」出演 1998年4月 1999年 60ヶ月 20ヶ月 80ヶ月
AKB48 2005年10月 秋元康プロデュース「秋葉原48プロジェクト」第一期生合格 2006年10月 2007年(アキバ枠)/2009年(単独) 12ヶ月 14ヶ月/38ヶ月 26ヶ月/40ヶ月
Perfume 2000年春 アクターズスクール広島内で「ぱふゅ〜む」自主結成、2003年春「Perfume」 2005年9月 2008年 66ヶ月 45ヶ月 111ヶ月
西野カナ 2005年12月 角川映画とソニーミュージックアーチスツによる「スーパー・ヒロイン・オーディション ミス・フェニックス」で勝ち抜く 2008年2月 2010年 26ヶ月 22ヶ月 48ヶ月
ももいろクローバーZ 2008年5月 所属事務所内で結成 2010年5月 2012年 12ヶ月 19ヶ月 31ヶ月
演歌
小林幸子 1963年 TBS「歌まね読本」グランドチャンピオン 1964年6月 1979年 12ヶ月 186ヶ月 198ヶ月
石川さゆり 1972夏 CX「ちびっ子歌謡大会」合格 1973年5月 1977年 10ヶ月 55ヶ月 65ヶ月
坂本冬美 1986年 NHK「勝ち抜き歌謡天国」名人 4月から11月まで猪俣公章に弟子入り 1987年3月 1988年 11ヶ月 19ヶ月 30ヶ月
その他の苦労人
森口博子 10代よりスクールメイツに所属。1985年3月 NHK「勝ち抜き歌謡天国全国名人大会」で準優勝 1985年8月 1991年 5ヶ月 77ヶ月 82ヶ月
水樹奈々 1994年6月 「せとうちのど自慢10周年記念全国大会」グランドチャンピオン 2000年12月 2009年 78ヶ月 109ヶ月 187ヶ月

 

■かかる時間は同じでも、道のりが違う
こうやって比べてみると、かつてのアイドルはオーディションで合格することが、また演歌歌手の場合はのど自慢大会で優勝したことが、それぞれ登竜門となっている。メジャーデビュー(メジャーレーベルからのシングルの発売)までにかかる期間は、アイドルでも演歌歌手でも1年前後と変わらないようだ。ピンクレディー、浜崎あゆみ、Perfume、水樹奈々はメジャーデビューまで時間がかかっているが、これは小学生もしくは中学生から活動を開始しているため、助走期間が長くなってしまったと考えたい。

トップアイドルの場合、メジャーデビューから紅白出場までの期間は短くて1年、長くても2年程度。若くてキラキラしていることが最大の商品価値なので、短期決戦にならざるを得ない。それに対して演歌の場合は、歌がメインだから若さや可愛さは必須ではない。小林幸子のように15年かかる場合もあれば、坂本冬美のようにアイドル歌手並みのスピードで紅白出場を果たす人もいる。

AKBと“ももクロ”も、単純に時間だけで比較するとメジャーデビューまでの期間も紅白初出場に要した月日も、昭和のアイドルと比べて変わりが無い。ただ、最初から大勢の観客の前で華々しいデビューが用意されていた昭和のシンデレラたちに対して、AKB48の最初のライブは観客が7人しかいなかったし、“ももクロ”のスタートは代々木公園の路上ライブで衣装もマイクもなかった。Perfumeも最初のライブの観客は3人だったそうだ。そういう底辺を経験したアイドルは昔もいただろうが、紅白に出場するまで成功したものはいない。少なくとも20世紀中のアイドル市場でトップを目指すには、TVなど大手メディアの力を借りられるポジションにいる必要があったわけだ。

しかし、現代のアイドルは地道にライブを重ねてファンとの交流を繰り返しながら、コアなアイドル好きを手始めに徐々に一般層に認知を広げる方法で頂点を目指すことが可能になった。

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■ソーシャルメディアが変えるアイドルの売り方 
昔読んだマーケティングの本に商品を広く普及させる2つの戦略について書かれていた。ひとつは「ペネトレーション戦略」。大量の広告を打ち大量の商品を店頭に並べることで一気に数の多いフォロワー層に浸透させる。もうひとつは「スキミング戦略」。数が少ないが感度の高いイノベーター層アーリーアダプタ層から徐々に浸透を図るやり方のことだ。ペネトレーション戦略を行うには、大きなコストがかかるので大手企業や部門にしか行えない。弱小企業や部門がヒットを狙うには時間をかけてクチコミで広めるスキミング戦略をとるしかない。

20世紀のアイドルの売り方はペネトレーション戦略で、演歌歌手はスキミング戦略だ。しかし、21世紀の今はアイドルもスキミング戦略で売っていく時代になった。以前、NHKでデイブ・スペクターが初音ミクの人気について「いまの消費者はメディアに押しつけられたものより、自分がネットで“発見”したものを好む傾向がある」と言っていた。そういった消費者心理の変化が、アイドルをペネトレーション戦略で売ることを難しくし、スキミング戦略を展開しやすくした可能性はある。

ここで面白いのは、現代のアイドルもしくは女性歌手の市場戦略おいて、スキミング戦略がペネトレーション戦略に比べて時間がかかるとは限らないことだ。前述のように、AKBと“ももクロ”が結成してから紅白に出場するまでにかかった時間は昭和のアイドルと変わらない。AKBが26ヶ月、“ももクロ”が31ヶ月。それに対して、典型的なペネトレーション戦略をとったと思われる西野カナは、オーディション合格から紅白出場までに48ヶ月かかっている。

かつて小林幸子が15年かけた道のりを、“ももクロ”は1年半で踏破した。このスピードアップの理由は、YouTube、ニコ動、Ustream、2ちゃん、mixi、ブログ、Twitter、NAVERまとめ、などの各種ソーシャルメディアの普及にあると思う。これらのツールを使った熱心なファンたち(=アーリーアダプタ層)が、勝手広報マンと化して“ももクロ”のファン層の拡大に努めてきたことが、かなり威力を発揮しているはずだ。実は僕が“ももクロ”を知り興味を持ったのも、facebook→まとめブログ→YouTubeという3連コンボがきっかけだった。その後も、facebookやTwitterやニコ動、YouTubeを通して“ももクロ”の情報に繰り返し接触するうちにどんどん興味が強くなって、とうとうiTunesでアルバムを買ってしまった。

YouTubeには公式動画だけでなく、ファンによってアップロードされた膨大な非公式の“ももクロ”関連動画がある。その気になれば、デビュー直後の路上ライブから、インディーズデビューした曲、グループ名変更のインパクトを残した早見あかり脱退のいきさつを語る本人たちの談話まで、なんでも見ることができる。“ももクロ”の路上ライブは、大手事務所としては例外的に撮影OKだったそうで、最初からソーシャルメディアによる拡散を意識していた節がある。YouTube上の非公式動画も意図的に野放しにしているのかもしれない。

■疑似恋愛よりも青春
もうひとつ書いておきたいことがある。アイドルの売り方がマスからソーシャルに変わることで、アイドル歌手がファンに提供するものが質的に変わっていくのではないか?

昔から、アイドルのファンになるということは、そのアイドルと疑似恋愛をすることだった。そのアイドルの笑顔や姿態やしぐさや歌声にキュンとなるから、追いかけ続ける。歌を聴いたりPVを見たり写真集を眺めることで、永遠に満たされない恋心を慰める。歌が好きだからとか、生き方に共感しているとか、どんなきれい事を言ったところで、アイドルファンの本質は疑似恋愛である。それは長らく変わりのないことだった。

だけど、アイドルの売り方がマスからソーシャルに変わりつつあることは、アイドルとファンの関係が短期的な疑似恋愛から、もっと長期的な関係に変化してきているのかもしれない。いやすでにアイドルに求められるものが疑似恋愛よりも、全力全開で行われる歌や踊りのパフォーマンスによる、まるでスポーツを応援しているかのような共感や青春の仮想体験に変わりつつある気がする。アイドルと共に青春を体験するというのは秋元康が作品世界のなかでずっと得意としてきたことだが、体育会系アイドルとでもいうべき“ももクロ”の登場で、より一層「青春の仮想体験」が重要になってきていると思うのだ。
 

 

 

トランプやろうよ

年末年始、妹夫婦と姪と甥がやってきた。姪が小学校5年生、我が家は男女の双子の4年生、甥が2年生と年が近く、男女二人ずつとバランスが良いせいかとても仲が良い。来る度によく遊ぶのだが、最近ちょっと気になっていたことがある。

放っておくと、DSばかりやっているのだ。全員が1台ずつ持っているので、お互いに情報交換したり通信したりもしながらではあるけど、せっかく従兄弟同士集まったのに、無言で液晶ディスプレイを見つめてばかりでは味気なさ過ぎる。普段は1日1時間だけとルールはあるのだけど、親戚が集まった場という特殊性のせいか、そんなルールもなし崩しになってしまう。

しかし、単に「DSばっかやってちゃダメ」と言ってもなかなか改善はしない。ほかに面白い遊びを知らないから、そうなるのだ。ということで、今回の年末年始はトランプで遊ぶことにした。

2013 01 07 08 08 13

最初は、「ババ抜き」。次に「ジジ抜き」。「神経衰弱」に「七並べ」。けっこう、子供たちは楽しんでくれる。ただ、この程度のトランプゲームだと飽きが来るのも速い。複雑なデジタルゲームに鍛えられた小学校高学年を熱中させるには、より高度な戦術と知略を必要とするゲームが必要だろう。

息子が、最近児童館で「UNO」をやって楽しかったというので、UNOのトランプ版である「ページワン」をやってみる。僕自身もページワンなんて、20年ぶりぐらいなのでウロ覚えだ。iPhoneでWikipediaを読みながらルールを確認した。最初に子供たちに教えたルールが、Wikipediaとかなり異なっているので冷や汗をかいたが、よく読むとそこに書いてあったのは「ヨーロピアン・ページワン」のルールで、僕が子供の頃よくやったルールは「アメリカン・ページワン」だとわかった。

やっているうちに段々思い出してきて、僕も面白くなってくる。最後から2枚目のカードを場に出すときに「ページワン!」と宣言しないと、場に出ているカードをすべて貰わなければいけない、という罰ルールを導入することで、緊張感がぐっと増してくる。昔から熟成されてきたトランプゲームのルールってよくできているなと感心する。

ページワンの次は「大貧民」。シンプルでスピード感のあるルールは中毒性が高い。そういや大学生のころ、スキーに行った夜に延々とやったりしたよなあ、などと懐かしみつつ、これもWikipediaでルールを確認した。僕はこのゲームを「大貧民」とずっと呼んでいたけど「大富豪」という名称の方がより一般的だそうだ。

甥と姪の滞在中は、ほぼ毎日、夕食のあとはトランプで遊ぶのが定着した。一度、TVの警察ドキュメント特番に子供たちがハマって、食い入るように見続けていたときも、「今日はトランプなしでいいの?」と聞くとアッサリとTVを切り上げてトランプに移行したので、よほど気に入ったらしい。

「もっと、ほかのゲームも憶えたい!」というので、「ポーカー」を教えてみることにした。まずは、ワンペア、ツーペア、スリーカード…と役を教えるが、いきなり短時間で全部憶えられるわけもない。最初は全員の手を見ながら、どれを残してどれを捨てるかアドバイスしていく。そのうちに段々とコツが飲み込めてくるので、「あとは自分で考えてやってごらん」とちょっと突き放す。

「ポーカーは本当はチップをかけて、そのチップの数を競うゲームなんだ」

「へー」

「だから、1回、1回の勝ち負けや役の出来よりも、自分が有利なときにチップをたくさん賭けて稼いだり、ときには役がなくてブタのときにもブラフだけ勝ってチップを奪うこともあるんだ」

「へー!!」

どうも、「チップの奪い合い」というのが、子供たちの心に刺さったらしい。ふだん金貨を稼ぐようなデジタルゲームに親しんでいるためだろうか?

翌日はなんと、「ポーカーのチップも持ってきて!」というリクエストが事前に電話できた。10年ぶりくらいにポーカーチップのセットを掘り起こしてもっていく。

前日も盛り上がったけど、チップをかけ出すと、熱中度のレベルが違う。役がなくてもチップを積み上げたり、ワンペアを捨てて勝負に出て見事にフラッシュを作ったり、あっという間に小さなギャンブラーたちが誕生していた。ちょっと意外なくらいの勝負感覚の強さ、思い切りのよさは、やはりDSやWiiのゲームで培われたものなのかもしれない。

次の春休みかGWには、「セブンブリッジ」でも教えようか? いずれは花札や麻雀も教えたい。今はネットで簡単にルールを調べることができるし、無料のオンラインゲームで腕を磨くことも出来る。デジタル全盛の今の時代こそ、リアルのテーブルゲームをより楽しむことができるのかもしれない。そして、人と人のリアルな駆け引きとコミュニケーションを知ることは、子供たちのこれからの長い人生にきっと役立つと思うのだ。

【参考】 

トランプスタジアム http://playingcards.jp/
FLASHによる、無料トランプゲームのサイト。ババ抜きや七並べから、ダウト、51、ページワン、セブンブリッジ、ポーカー、ブラックジャックなどなど有名なトランプゲームはほとんどカバーしている。
ルールの解説を読んで、オンラインゲームをすれば懐かしいゲームを楽しみながら思い出すことができる。