ライター、編集者としての仕事環境について、まとめてみました

20数年前にお世話になったCSK時代の先輩から、「ライターや編集者はどんな道具を使って仕事をしているのか?」と質問されました。

これについては以前から、ちょっとまとめておきたいと思ったいたところで、いい機会なので書いてみました。


なお、僕は20年来、ほとんどMacだけで仕事をしてきました(Windowsの特集記事もMacで書いてました)。なので登場するソフトウェアはMac用のものが主ですが、Windowsでも使えるソフトもありますし、「クラウドサービス」と呼ばれる、OSやマシンに縛られずに使える道具も増えてきました。

■ライター、編集者の仕事とは?

まず、言葉の定義を少し明確にしておきましょう。ライターや編集者って何をする人なのでしょう? 僕の場合、いまは電子書籍の編集の仕事もしていますが、十数年にわたって雑誌の仕事をしてきたので、主に雑誌のライターと編集者について書きます。

大雑把に言うと、

・ライター:編集者に仕事を依頼されて記事の文章を書く人。

・編集者:記事を企画して、ライターに文章を発注したり、カメラマンに撮影を依頼したり、イラストレーターにイラストを依頼したりする人。編集者が自分で文章を書くのを「スタッフライティング」と言いますが、僕は発注仕事とスタッフライティングの両方をやってきました。

さて、記事を作る仕事は、だいたい以下のような順番で行います。

(1)企画

企画段階では、いま、何を記事にすべきか、という情報を収集します。Webを検索したり、詳しそうな人から話を聞いて企画用の情報を集めます。

それらをまとめて企画書を書くこともあります。

(2)取材、情報収集

記事を作ることが決まったら、本格的に記事にするための取材を行います。取材やインタビューを申し込んだり、資料をかき集めて読みまくったりします。

製品レビューの記事では、徹底的に使い込んだり、テストを行ったりして、その結果をまとめます。

(3)構成、ラフレイアウトの作成

記事を十分作れるだけの情報が集まったら、記事の構成を考えます。どんなタイトルや見出しをつけて、どんな内容の記事にするのか、どんな写真やイラストや表をいれるのかを考え、ページ数から記事の文字数も割り出します。

(4)文章発注、ライティング

ここでようやく記事の執筆を行います。記事を書く時点で、なにを書くかが明確になっていれば、比較的スムーズに執筆は進みます。しかし、(1)から(3)の段階で詰めが甘いと、ここで悩んで時間を多く使うことになります。

(5)原稿整理

ライターに発注された文字原稿が編集者に入稿されると、編集者はその文字原稿を確認、修正します。確認・修正するのは誤字脱字、内容的に間違っていないか、読みやすさ、理解しやすさ、さらに記事としてそもそも面白いか、など多岐にわたります。誤字脱字や内容確認などは、「校正」や「校閲」という専門職に依頼するのが一般的です。最近知ったのですが、文章の修正は校閲にまかせて、自分ではほとんど文章をいじらない編集者というのもいるそうです。

なお、編集者が自分で文章を書いた場合でも、原稿整理はやはり行います。自分で書いた文章を自分でチェックするのは難しいので、同僚にチェックをお願いすることもあります。

(6)入稿

ライターから編集者に記事を納品することも「入稿」といいますが、原稿整理が終わった記事原稿、レイアウト、写真原稿などをひとまとめにして、印刷業者やDTPオペレーターに渡すことも「入稿」と呼びます。最近は、デザイナーがDTPオペレーターも兼ねていることも多いです。

Webマガジンの場合は、HTMLコーダーと呼ばれる人に入稿します。

(7)校正

入稿した文字原稿や写真原稿などが、雑誌のページレイアウトに割り付けられた状態ででてきます。これを「校正刷り」とか「ゲラ刷り」、もしくはシンプルに「ゲラ」などといいます。このゲラに赤ペンなどで直しを入れてゲラの制作者(DTPオペレーターやHTMLコーダー)に戻します。

昔は、外部のライターに対してはゲラがFAXで送られてきましたが、今はPDFがメールで送られてくるのが一般的になってきました。

(8)校了

ゲラの校正を何度か行って、赤字を入れる必要がなくなったら作業が終了します。これを「校了」と言います。あとは印刷されて製本されて見本誌が届くのを待つか、Webマガジンならネットで公開されるのを待つことになります。

商業雑誌は、編集者、ライター、カメラマン、イラストレーター、エディトリアルデザイナーといった各分野のプロが集まって、それぞれの専門的な知見をぶつけあってお金をとるに値する記事を作り上げます。ただ、誰がどんな仕事をするかは明確には決まっていなくて、とくにライターと編集者とデザイナーの役割は編集部ごと、もしくは編集者ごとに大きく変わります。

僕は、誌面の構成=ラフレイアウトの作成は、雑誌編集者のもっともコアな仕事のひとつだと考えていますが、編集部によっては、社内デザイナーが記事構成を考えていたり、逆に外部ライターにラフレイアウトを描かせるところもありました。

■取材と情報収集の道具

EvernoteEvernote Web Clipper

(1)企画と(2)取材、情報収集の2つのフェーズは、もっとも重要なフェーズでここで鮮度と精度の高い素材をどれだけ集められるかで、記事の出来が大きく変わってきます。

ここで仕事の核になるのは「Evernote」(エバーノート)です。Evernoteはクラウド上にあらゆる情報を分類して保存できるサービスですが、僕は主に文字情報とそれに付随する図版の保存に使っています。

Webブラウザの「Google Chrome」の拡張機能として、「Evernote Web Clipper」をインストールしておき、検索して見つけためぼしいWebページは、Evernote Web Clipperを使ってどんどんEvernoteに保存していきます。Evernote Web Clipperには「簡易記事の作成」という機能があって、これをデフォルトにしておくとWebページの余計な装飾や広告を取り去って、必要な記事と図版だけを表示させることができます。この状態で「保存」しておけば、1枚のノートとしてEvernoteに保存されます。

Evernoteには、複数のノートをひとくくりに管理する「ノートブック」という機能があるので、企画毎に「ノートブック」を作って、保存したノートをまとめておきます。企画に関する思いつきのメモや備忘録もとりあえず、ノートブック内にノートを作って保存しておきます。

EvernoteのiPhoneアプリを使えば、移動中のとっさのメモも「クイックノート」機能を使って保存し、あとで適切なノートブックに移動することで管理できます。

Dropbox

情報収集時には、画像やPDF、ExcelやWordの文書ファイルなど、さまざまなファイルが集まってきます。僕はこれをEvernoteに入れずに、Dropbox(ドロップボックス)で管理しています。Dropboxで管理するということは、実質Macのファイル管理機能をつかって管理するということで、これならどんなファイルでも素早く中身を確認したり、修正することができます。Evernoteのノートブックと違って、フォルダの階層構造を自由に作れる点も便利です。

さらにDropboxには履歴保存機能があるので、うっかり上書きしてしまったファイルを簡単に元に戻すことができます。

なお、写真やデータファイルにテキストで注釈が必要な場合は、Evernoteのノートに貼り込んで、テキストの説明を付け加えます。最近になってEvernoteはWordやExcel、PowerPoint、Pages、Keynoteなどのファイルを貼り込むと中身を表示してくれるようになったので、管理しやすくなりました。

DropboxとEvernoteは、ともにクラウドサービスなので、複数のパソコンやモバイル機器から常に同じ情報にアクセスできます。僕の場合、デスクトップのiMacと持ち歩き用ノートブックのMacBook Air、さらにiPhone 5sとAndroidタブレットのNexus 7を常時並行して使っていますし、ときにはWindowsマシンから使うこともあります。

DropboxをEvernoteと併用するコツは、EvernoteのノートブックとDropboxのフォルダに同じ名前を付けることです。こうしておけば、迷わずに必要な情報を取り出すことができます。

iPhoneのカメラとボイスメモ

取材ツールとして非常に役立つのが、iPhoneのカメラとボイスメモです。これでとにかく写真を撮りまくり、談話を録音しておいて、写真ファイルや音声ファイルはDropboxで管理します。なお、写真を撮ったり録音をするときは、必ず相手に許可を取りましょう。これは最低限のマナーです。

撮影と録音を同時に行う必要があるときは、iPhoneで撮影して、録音はNexus 7で「Hi-Q mp3」というソフトを使って行っています。

■構成を考える道具

(1)企画と(3)構成、ラフレイアウトの作成の2つのフェーズでは、集まった情報を整理して優先順位をつけ、わかりやすく並べていきます。
こういうとき、最近はマインドマップを使うのが流行のようですが、僕はアウトラインプロセッサを使います。

アウトラインプロセッサとは、文章を階層的な入れ子構造で構築できる一種のワープロです。大見出し、小見出し、本文などを打ち込んでいって、マウスやキーボードショートカットを使って入れ子構造を簡単に変更できます。

このアウトラインプロセッサを使って思いついたことを、ひたすら書き出していって、あとで構造を整理して、情報を足したり引いたりすることで企画や記事の構造が浮かび上がってきます。

僕が使っているアウトラインプロセッサは「OmniOutliner Pro」(オムニ アウトライナー プロ)です。これはMacの代表的なアウトラインプロセッサでiPad版もありますが、残念ながらWindows版はありません。

また、Evernoteには、文章のフォーマットでリスト表示を適用すると、タブキーとシフト+タブキーを使った簡易アウトライン機能が使えます。最近は、小さい企画のときは、Evernoteの簡易アウトライン機能で済ませることが増えてきました。

いっぽう、OmniOutliner Proのほうは、作成した構造をApple純正プレゼンテーションソフトのKeynote形式で書き出すことができます。そこで、プレゼンのスライドを作るときは、まずOmniOutliner Proで構成を作ってから、Keynoteに書き出して装飾を加えるようにしています。

Windowsにも、アウトラインプロセッサがいくつかあるようですが、Microsoft WordとMicrosoft Excelにもアウトライン機能があります。OmniOutliner Proで作成した新書の骨子をWidnowsユーザーの編集者に送るときは、Word形式で書き出して送ったりすることもあります。

■絵で構成を考える

ある程度構成が決まったら、それを元に誌面レイアウトを考えます。また、文章だけでは表現しにくい概念を表すイラストやチャートのラフも作成します。
僕がこのとき使うのは、「OminiGraffle Pro」(オムニ グラフ プロ) というやはりMac専用のソフトです。Windowsで言えば、Microsoft Visioでほぼ同じことができます。

OminiGraffle Proを使うと、絵を描くのが苦手な人でも、丸や三角、四角、矢印など用意された図形を組み合わせるだけで、手早くそれっぽい絵を描くことができます。また「ステンシル」と呼ばれる絵の部品がネット上に大量に無料で提供されており、それらを使うことで表現力を増すことができます。

■文章を素早く正確に記述する

(4)文章発注、ライティング、(5)原稿整理、(6)入稿においては、大量の文字原稿を効率良く修正し、正しい文字数の入稿用原稿を作成しなければなりません。こういった文字テキストの編集には、もっとも一般的なワープロであるMicrosoft Wordを使うこともできます。

Microsoft Wordは非常に多機能なのですが、その分動作が遅いなど、素早く仕事をしたい僕には使いやすいソフトとは言えません。こういうときに威力を発揮するのが「テキストエディタ」と呼ばれる種類のソフトウェアです。もともと、膨大なプログラムソースを編集するためのソフトなのですが、書籍や雑誌の原稿を書くときにも絶大な威力を発揮します。

僕が現在原稿の執筆や編集にメインで使っているテキストエディタは「Jedit X」です。行番号表示機能と1行の文字数を指定できるので、雑誌原稿を書くときに非常に重宝します。さらに縦書き機能と原稿用紙表示機能を使うことで、新書の原稿を書くのにも重宝しました、

Jedit Xのようなテキストエディタは、あらゆる種類の文字コードや改行コードに対応していたり、正規表現を使った高度な検索・置換機能が使えるので、原稿書き以外の用途でも、Wordで文字化けしてしまうテキストを読み込んでみたり、Excelの表をいったんテキストに書き出して加工したりなど、ビジネスの現場でもとても重宝します。Windowsの場合は「WZ EDITOR」などさまざまエディタがあるので、ネットで評判を集めたり、試用版を使ってみたりしてお気に入りのエディタを探してみてください。

ちなみに僕はプログラムを書くときは、TextMate 2.0αを使っています。

■日本語IMEを選ぼう

MacにもWindowsにも標準で日本語を入力するためのかな漢字変換システム(日本語IME)がついてきます。しかし、残念ながらMacのもWindowsのもあまり賢くないため、それが原因で文章入力効率が落ちたり誤字脱字が増えたりします。なので、ライターでも編集者でもWebディレクターでも、文字を書く仕事についているなら、日本語IMEも選ぶべきです。

僕は、ジャストシステムのATOK Passportを使っています。この製品は日本語入力の定番中の定番であるATOKを月額300円で最大10台のMac、Windows、Androidにインストールして使えるというものです。クラウドを使うことで単語登録を共有することもできるので、大変便利です。

■校正するときはデジタルよりもアナログ?

(7)校正においては、前述のようにゲラ刷りがPDFで送られてきます。このPDFにどうやって、朱を入れるのが良いのでしょうか? Macに標準で付いている「プレビュー」というソフトには、PDFに図や文字を書き込んで保存する機能があります。Evernoteから提供されているSkitchというソフトを使ってもPDFに修正指示を入れることができます。

また、iPadやiPhoneのアプリとして人気のあるGood ReaderやNote AnytimeにもPDF校正機能があります。

しかし、いろいろ使ってみた結論として、僕はPDFをA4の紙に印刷して、赤のボールペンで修正を指定し、それをスキャナで再びPDF化してメールで送り返すというフローがいまのところ一番効率が良いと結論になりました。

自宅にあるブラザーの複合機「DCP-J925N」には低価格ながらドキュメントフィーダが付いているので、複数ページのスキャンとPDF化も簡単に行えます。

■長い文章を書くなら

僕がふだん、雑誌の原稿を書くのに使っている道具はだいたいこんなところです。

もし、単行本や長い論文を書くのなら、Scrivenerというソフトもなかなか良いです。これはクラウドとつながっていないEvernoteにアウトライン機能を強化したようなソフトで、さまざまなテキストや写真やExcelのデータ表を収拾して、章立てしながら執筆できるソフトです。ScrivenerにはWindows版もあります。

僕はScrivenerのHTML書き出し機能を使って、画面の数がやたら多いWebページを効率的に作ったこともあります。

関連記事

投稿者:

ともゆき@zubapita

ともゆき@zubapita

作ったモノ 雑誌:月刊アスキー(デスク)、アスキー.PC(副編集長)、インターネットアスキー(編集長)、アスキーPCエクスプローラー(編集長) Webサイト:東京グルメ/ライブドアグルメ、映画を語ろう、本が好き 著書:「Twitter 使いこなし術」「facebook 使いこなし術」 最近は、株式会社ブックウォーカーにて、「BWインディーズ」をやってます。

“ライター、編集者としての仕事環境について、まとめてみました” への1件のフィードバック

  1. 長らく雑誌制作をお願いして来た制作会社の方が突然お亡くなりになり、引き継ぎに苦慮しているところです。
    現場サイドの情報として貴重な書き込みに感謝致します。
    ついでながら実務上の相談は可能でしょうか?
    よろしくお願いします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>