昨年末も紅白歌合戦を見てしまった。TVの前に座ってしっかり見ていたわけではないけど、とりあえず、家族や親戚が集まって夕食をとりながら、TVのチャンネルをNHKに合わせてお茶の間のバックグラウンドに紅白を流す。たまに知っている歌手が出ると「XXでてるよ!」「今年はXX出ていないんだ」「XXって誰?」なんて会話を交わす。大晦日の夜には、そういう風景が日本中のあちこちで見られたのではないだろうか。
普段はTVの音楽番組を見たりしないので、年に一度紅白を見て、その年に流行った歌や話題になった歌手を知る、というのも僕だけではないだろう。
2012年は僕のまわりで、“ももクロ”こと、ももいろクローバーZにハマった老若男女が多く、僕もアルバムを買ったりしたが、紅白で歌った2曲のうち、前半の「サラバ、愛しきかなしみたちよ」は知らなかったので、翌日、ググってYouTubeで公式MVをあらためて見てみた。
コメント欄に「iTunesで2位になっている」という書き込みがあったので、iTunes Storeを見に行ってみた。するとたしかに、ももクロの歌が2位になっていた。メドレーのもう1曲である「怪盗!ももいろクローバー」も10位に入っている。それだけでなく、なんと上位10曲中の9曲までが紅白出場曲だった。
iTunes ミュージック総合ランキング(1月2日朝)
- 1位 「風が吹いている」 いきものがかり
- 2位 「サラバ、愛しきかなしみたちよ」 ももいろクローバーZ
- 3位 「女々しくて」 ゴールデンボンバー
- 4位 「やさしくなりたい」 斉藤和義
- 5位 「GO FOR IT !! 」西野カナ
- 7位 「紙飛行機」 コブクロ
- 8位 「いちばん近くに」 HY
- 9位 「ファッションモンスター」 きゃりーぱみゅぱみゅ
- 10位「行くぜっ!怪盗少女」 ももいろクローバー
もはや国民的行事ではなくなってきたと言われて久しい紅白歌合戦だが、今回の視聴率は42.5%(関東地区、第2部)。5年連続で40%以上をキープしている。計算上は4000万人くらいが見ているわけで、放映後24時間以上たってもiTunesランキングの上位を独占するだけの影響力はあるわけだ。
しかし、11位から30位を見ると、紅白曲でエントリーしているのは3曲。50位まで広げてみても9曲しかない。4000万人が見ているなら、もっとランキングに影響があってもいいんじゃないか? と思った。
総合ランキング11位以下(1月2日朝)
- 14位 「サヨナラじゃない」FUNKY MONKEY BABYS
- 16位 「花火」三代目 J Soul Brothers
- 26位 「つけまつける」きゃりーぱみゅぱみゅ
- 31位 「Brave」ナオト・インティライミ
- 32位 「ギンガムチェック」AKB48
- 42位 「Rising Sun」EXILE
- 45位 「Good-bye days」YUIfor雨音薫
- 48位「はじまりのとき」絢香
- 50位 「 明日へ」MISIA
- 59位 「UZA」AKB48
- 66位 「DIAMONDS(ダイアモンド)」 プリンセスプリンセス
- 70位 「初恋」中島美嘉
- 71位 「777 〜We can sing a song!〜」AAA
- 77位 「天城越え」石川さゆり
- 85位 「BRIGHT STREAM」水樹奈々
- 107位 「ヨイトマケの唄」美輪明宏
- 152位 「プリズム」YUKI
- 182位 「夜明けのブルース」五木ひろし
- 186位 「Go to the top」倖田來未
なお、総合ランキングに入れなくても「歌謡曲」でランクインしている曲もあった。
歌謡曲ランキング(1月2日朝)
- 1位 「ヨイトマケの唄 」美輪明宏
- 2位 「夜明けのブルース」五木ひろし
- 3位 「夜桜お七」坂本冬美
- 49位 「恋ざんげ」伍代夏子
- 162位 「夜明けのスキャット」 由紀さおり&ピンク・マルティーニ
iTunes Stroeのランキングに登場しない曲は、3つのグループに別れる。
【1】紅白出場曲がiTunesで販売されているのに、ランキングに登場しない
浜崎あゆみ、SKE48、香西かおり、舘ひろし、森進一、細川たかし、徳永英明、天童よしみ、和田アキ子
これらの歌手は、(a) iTunes Storeに購買層がいない、(b) iTunes Storeのユーザーはみなすでに購入済みである、などの理由が考えられる。
【2】iTunes Storeで楽曲販売しているのに、紅白出場曲は買えない
- 「風雪流れ旅」北島三郎
- 「Spring of Life」Perfume
これはちょっともったいない。
【3】iTunesで一切、楽曲を発売していない
NYC、藤あや子、水森かおり、ポルノグラフィティ、関ジャニ∞、TOKIO、郷ひろみ、aiko、氷川きよし、嵐、福山雅治、SMAP、
これらの歌手やグループは、iTunes Storeでは販売していないが、着うたフルで入手可能な場合もあるようだ。
以上のリストをざっと見ていて、以下のようなことを考えた。
(1) 急成長中のアーチストは、紅白出場をきっかけにさらに購買層が広がる
AKB48やEXILEのように、現在人気の頂点にあるとおもわれるアーチストは、紅白に出たからといってiTunesランキングを賑わしたりはしない。それに対して、ももクロやゴールデンボンバー、きゃりーぱみゅぱみゅみたいな、2012年中に話題を集めた新しいアーチストがランキング上位を占める傾向がある。
それ以外の上位勢を見ると、斉藤和義はすでにベテランだが、「やさしくなりたい」は話題のドラマ「家政婦のミタ」の主題歌だ。
また、いきものがかりの「風が吹いている」はNHKのロンドンオリンピックのテーマソングで、紅白では紅組のトリとなった曲だ。
(2) 大ベテランは、定番曲がうける
昭和から歌い続けている大ベテランの中では、石川さゆりの「天城越え」と五木ひろしの「夜明けのブルース」がポップスが中心であるiTunesで総合ランキングに食い込む健闘をした。いずれも昭和を代表する歌謡曲なので、久しぶりに聞いて良さを思い出した、というアラフィフ以上の人たちが買ったのかもしれない。ちなみに、石川さゆりはもうひとつの代表曲である「津軽海峡冬景色」も190位にランクインしていた。(「夜明けのブルース」は新曲だそうでです。失礼しました。)
そう考えると、ランクインできなかった和田アキ子は今回の「愛、とどきますか」みたいな馴染みの薄い曲や、最近の定番である「あの鐘を鳴らすのはあなた」ではなく、「笑って許して」や「どしゃぶりの雨の中で」など初期のヒット作を歌ったほうが視聴者の琴線を揺らす可能性が高いかもしれない。
なお、美輪明宏の「ヨイトマケの唄」も107位と頑張っているが、この人は石川さゆりや五木ひろしと違って、現役の売れっ子TVタレントだ。現代のポップスとはまるで異質の存在だが、初出場という話題性に紅白での歌唱の素晴らしさも加わっての成績なので、上記のベテランたちとは少し事情が異なるといえるだろう。
(3) ポップス女王の終焉?
浜崎あゆみは、総合ランキングどころかJ-POPランキングにも入っていなかった。TVではいまだに大物アーチストの扱いだが、固定ファン以外にとっては関心を引かない存在となってしまったのかもしれない。僕個人も、最近の浜崎あゆみは、たまにTVでみても世界感がわかりにくいという印象しかない。“アーチスト”なので自分の世界を追求するのは当然かもしれないが、流行歌手としては難しい局面に入ってしまったように見える。
iTunes Stroreは日本では成功してない、という指摘もあるので、ここに述べたのは局所的なデータによる極論に過ぎないかもしれない。しかし、今後ネットで音楽を買うというのが一般的になっていくことは間違いないはずだし、TV出演がその売り上げに影響する動きもより強くなっていくだろうと思う。
音楽販売の関係者は今後、TV出演に合わせてネットでの販売を促進するノウハウを蓄積し展開していくことになるだろう。
今年もよろしくお願いします。五木ひろしの「夜明けのブルーズ」は去年の春の新曲です。
小浜さん、ご指摘ありがとうございます。訂正しました。