八景島で初音ミクに会ってきた

初音ミクと言えば、いまや超人気のバーチャル・アイドルである。その初音ミクのステージ・パフォーマンスを間近で見る機会に恵まれた。

 

IMG 2013

初音ミクのライブステージは開かれるたびに超人気のプレミアム・チケットになる。最初の頃は「バーチャル・アイドルのライブだぁ?」と世間的に(こいつ頭大丈夫か?)ぐらいの感じだったが、北米トヨタやGoogleやファミマのCMに出て、天下のNHKほか在京キー局の朝番組に何度も取り上げられたおかげなのか、最近は初音ミクを話題にしてもバカにされるどころか、「実は私も好きで」とカミングアウトされたりするくらいで、確実に人気は広がっている。

今、横浜・八景島シーパラダイスで9月23日まで上演されている『HATSUNE Appearance』は、出版社であるアスキーメディアワークスのCGM編集部が手がけた初音ミクの歌と踊りのステージ・パフォーマンスだ。TVなどで紹介される初音ミクのライブはゲームメーカーのセガのCGテクノロジーが注がれているが、出版社に高度なCGテクノロジーがあるわけがない。当然、低予算、手作り感満載になると思うのだが…これが行ってみたら、予想以上のハイクオリティだった。CGの立体感、踊りの滑らかさ、演出、どれをとっても素晴らしいできばえなのだ。

なぜそんなことが実現できたのかといえば、初音ミクのダンスPVを作成するためのフリーソフトウェア「MMD(MikuMikuDance)」とその使い手であるアマチュア作家たちを起用したことがその秘密だ。フリーソフトとアマチュア作家の手で、CGを専業とする企業にひけをとらないエンターテイメント映像を作り出したのだ。

今回制作を行った「CGM編集部」の”CGM”とは、たぶん「コンシューマ・ジェネレーテッド・メディア」(消費者が作り出すメディア)の略で、普段はニコニコ動画やYouTubeで活動しているアマチュア・クリエイターたちに、ネットの外でも活躍の場を提供し、その才能を活かしていくというのが「CGM編集部」の設立目的らしい。その最初の目的は、十分に果たされたんじゃないだろうか? というくらいに素晴らしいできだった。

驚きのクオリティの秘密はそれだけでなく、「EYELINER」という最新の立体映像テクノロジーも導入されているそうで、そこらへんはアスキーPLUSの記事にちょっと解説がある。

 

以下は余談が混じる。

20数年前、僕がアスキー編集部に転職したとき、ほかの出版社から来た元マンガ編集者の同い年の男性が雑誌編集のイロハを教えてくれた。あるとき彼が「プロはアマチュアにはかなわないんだよね」と言った言葉がずっと印象に残っている。予算や締め切りの制限のないアマチュアと、さまざまな制約の元で仕事をしなければならないプロではそもそも条件が違う。クオリティを追求するだけなら情熱のままに制作できるアマチュアが有利だという意味だった。

今回、『HATSUNE Appearance』の試写になぜか招待していただいたのだが、会場につくと、その”彼”がいた。
軽く話をしたあと、試写を見た。観客席のパイプ椅子がちょっとチープでもの哀しさを感じたが、いったんステージが始まると、そこに展開される世界観に圧倒された。

セガが作る初音ミクのライブと違って人間の演奏者はいない。
その代わり、背景や全景に映し出されるCGによるさまざまな特殊効果は、ステージにさまざまな変化を与える。これは「ライブ」ではないけど、先のEYELINERの立体映像テクノロジーもあって、まるでプロモーションビデオから初音ミクが抜け出てきて、目の前でパフォーマンスを演じているような、不思議な迫力がある。このプロジェクトのために新たにデザインされた初音ミクは頭身が現実の女の子に近く、それもリアル感に一役買っている。

お約束のアンコールがあって、最後にエンドクレジット。”彼”の名前を探しても、なかなか出てこない。最後にやっと出てきたと思ったら肩書きが「Contents Director」。プロデューサーの一つ前だったから実質「監督」ということなのだろうか。

出版のプロだった”彼”は、ここ数年、初音ミクとMMD、ニコニコ動画を通してアマチュアの映像作家として活躍し、とうとう映像ディレクターになってしまったようだ。

今回の企画にはCGM編集部とは別に「Angel Project」という企画名がついている。ネットでファンが初音ミクを賞賛するときの定型文である「ミクさん、マジ天使」からきているらしいのだが、映画とアニメが好きなだけの元雑誌編集者をたった数年で映像ディレクターに変えてしまうとは、初音ミクは本当に天使なのかもしれない。

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投稿者:

ともゆき@zubapita

ともゆき@zubapita

作ったモノ 雑誌:月刊アスキー(デスク)、アスキー.PC(副編集長)、インターネットアスキー(編集長)、アスキーPCエクスプローラー(編集長) Webサイト:東京グルメ/ライブドアグルメ、映画を語ろう、本が好き 著書:「Twitter 使いこなし術」「facebook 使いこなし術」 最近は、株式会社ブックウォーカーにて、「BWインディーズ」をやってます。

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