【インタビュー】green.jp編集長 鈴木菜央さん

green.jp編集長 鈴木菜央さんインタビュー

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 鈴木菜央(@suzukinao)さんと僕はTwitterで出会った。それを出会いと言っていいかどうかはわからないが、僕は彼の知的でユーモアのあるツイートが好きで、日本のTwitterが盛り上がりだした2009年の夏にはTL上でときどき絡んだ。

 僕も在籍していた遠藤編集長時代の月刊アスキーが好きだった、なんてツイートで会話を交わしたりして、余計に嬉しくなったりしていた。

本が好き!」で『地球環境学事典』を紹介するときに、どうせなら「本を軸に地球環境を考える」企画ページを作ろうという話がでて、だったら、鈴木菜央さんに登場してもらったらいいんじゃないか? とすぐに思いついた。

 実際、鈴木さんに協力をお願いしたのは大正解で、「生物多様性」と僕らの生活の関わりをわかりやすく語ってくれた。

 だけど、それだけではなくて、インタビューでは、鈴木さんがやっているgreenz.jpについても興味深い話を聞くことができた。

 というか、僕が興味津々だったのだ。エコ専門のWebマガジンって、ちゃんとビジネスが成り立つのだろうか? どのような収益源があるんだろうか? 以前、月刊アスキーの連載でネットベンチャーの起業家たちをインタビューして回っていたときの感覚が蘇り、greenz.jpと鈴木さんご本人についても、いろいろ聞いてしまった。

 そして、せっかく話が聞けたので、ご本人に許可をいただいて、僕のブログにインタビューのほぼ全文を掲載させていただくことにした。

 COP10、生物多様性、地球環境学事典などについては企画ページで紹介しているので、一部重複はあるが、掲載できなかった部分をこちらで紹介する。

■greenz.jpとCOP10のなさそうで深い関係

ーー greez.jpは、エコ関連のWebマガジンで、関東近郊にエココミュニティを作ったりという印象が強いのですが、COP10のような地球環境に関する真面目なイベントとの接点もあるんですか?

 greenz.jpは、出発点はエコだったんですが、現在はエコだけでなく、社会の持続可能性、個人の持続可能性、夢を実現できるような社会にしたいというのをテーマにしています。

 たとえば、日本の「祭り」がなくなっていくことについて。たとえばアイヌの習慣が消えていくことについて。greenz.jpは、持続可能性という広いとらえ方で、さまざまな「グッドアイデア」を支援しているメディアなんです。

 創刊は2005年ですが、2008年ぐらいから、「世の中が良くなるグッドアイデア全般」というところにテーマを求めて、その中に「持続可能性」を求めると、環境も社会も経済もテーマとして入ってくる。

 私たちは社会変革をしたい。「株式会社ビオピオ」という会社名は、生態系という意味でバイオのビオと、パイオニアでありたいという思いからパイオニアのピオをとって「ビオピオ」と付けたんです。

 ビオピオという会社の存在そのものは、社会変革を起こしてビジネスをしたい、ということを目的にやっている。今はその中のひとつとして、greenz.jpをやっている。そのメディアを通してグッドアイデアを世の中に広めるということをやっているのだけど、それだけでは世の中変わらない。残念ながら、メディアだけでは、黒字化もできない。

 それじゃあ、どうやったら世の中を変えられるんだろうか? 企業が変わっていくお手伝いをするんです。

 greenz.jpをやっていることで、情報が集まってくる。つまり、新しい流れが見えやすいポジションにいると思うんですよ。今後、CSRがどうなっていくのか? 資本主義経済がどうなっていくのか?

 いろんなところで、わたしたちはフラットに情報を摂取している。そういった知見を活かして、企業に対して彼らが変わっていくのをサポートしていこうというのが、ひとつのビジネスになるんです。言ってみれば、コンサル+制作÷2みたいなことなんですけど。

 たとえばCSRレポートを作ると言うことであったり、ブランド・アイデンティティを一緒に考えていこうとするんですけど、そのとき会社がどういう方向に行きたいのか? どういうふうになっていけば、世の中に直に必要とされる会社になっていけるのか? それを一緒に考えていく、ということがビジネスの中心になっています。

 そのなかでクライアントさんも、今回のCOP10に合わせてやっていく動きがある。それに合わせて私たちも動いている、という形になっています。

■東京駅周辺で、持続可能性の街作り

ーー 具体的には、どんなクライアントさんがいるんですか?

 三菱地所さんが東京駅周辺の、大手町・丸の内・有楽町のエリアの街作りをしている。そのエリアで、どうやれば持続可能な街作りをしていけるか? どういう街にすれば、よりみんなに必要とされる街になっていけるのか? ということを、2007年ごろから、一緒にやらせていただいています。

 こういった(「1000年続くまちへ。」というパンフレット)“街のCSRレポート”という今までにないものを作ったり、彼らのポータルサイトを作って、参加型の街作りをやったり、住民がお客様じゃなくて主役になるような、それがサステナビリティ(持続可能性)につながるような街作りをお手伝いさせていただいたりしています。

ーー この「1000年続くまちへ。」は、フリーペーパーなんですか?

 これは、実際にフリーペーパーとして配布しています。この街には4000の会社があるんですが、それぞれにCSRの担当部署がある。その人たちを横つなぎするようなサロンを一緒に運営するといったこともやっています。

 そのほかにも「エコッツェリア」というポータルサイトがあります。これは設計段階からやらせていただいてブランドの構築を考えました。

 このポータルサイトの中に「丸の内地球環境新聞」というコーナーがあって、そのなかでクライアントさんと一緒にCOP10の関連企画を進めています、

 名古屋大学の先生のインタビューを掲載したり、生物多様性で第一人者とされている足立直樹さんにインタビューして、けっこうガッツリめの、8000字とか1万字のインタビューをして、そういった記事を作っています。

 それだけじゃなくて、クライアントは私たちに専門的な知識とコミュニケーションの戦略を作るというところで期待していると思います。それが私たちも強みだと思っているので、そういう意味でお仕事いただけているのかな、と思っています。

ーー さて、そのCOP10が18日からですが、なぜ重要なんでしょうね?

 僕も初めは生物多様性とか聞いたときに、なんのこっちゃと思いました。

ーー わかります(笑)

 これは、ちょっと勉強してみようと。僕は編集者なので、いろいろなところに取材に行く。それで、ある先生のところで質問してみたんです。「生物多様性ってまだ、ちょっとぴんとこないんです」って。

 そしたらその先生がですね、「君の目の前にコップがあるだろう」と。「君がこのコップでおいしい水を飲めるのは生物多様性のおかげなんだよ」と。

 えー!? どういうことですか? っと(笑)

「君は、今息しているだろう。酸素が供給されているのは生物多様性のおかげなんだよ」「君の机はなんでできている?」「木ですね」「木はどっからきたのか知っているか」「なるほど」「じゃあ、そこの窓はどうだ?」「これはガラスですね」「何からできているんだ」「ガラスは…石英ですかね? それの砂ですよね」「石油はなんだ?」「昔の生き物の死骸ですか?」

 言われてみると、あらゆるものが、昔の生き物であったり、生き物がいることで形作られた無機物でできているんですよね。で、なるほどなと。

 その数年後、『自然資本の経済』という本を読んでいたら、自然の生態系サービスの経済的価値を試算した研究によると、アメリカドルで年平均33兆ドルにのぼるというんですね。ちなみにその年の人為的な経済活動による世界総生産は、年間約18兆ドルだった。

 そもそも金額に換算することがナンセンスなわけで、生態系サービスは換えが効かない。そういう生態系サービスの恩恵を受けているから、メキシコから来るアボカドが、神奈川で作るアボカドより安いということが起きるんだな、と

 そういう話を読むと、あ、生きているっていうことは、いろいろ繋がっているんだな、と納得しました。子供の頃見た映画の「ナウシカ」とかも、あとになってなるほどなと思いました。

 いろんなレイヤーがあって、国民の生活というライフスタイルところから、ビジネスというところから、政治までいろいろなところで絡まり合って、凄く複雑なんですけど、もの凄く単純化して言うと、「どういう風に結びつけていくか」。

 僕たち、ここにいるみなさん、一般の人たちの、自分の考え方とか暮らしとかというのが、COP10などを通して変わっていくきかっけになるのでは。そういう風に期待しています。

ーー その生物多様性の重要性を考えていくタイミングで企画された「地球環境学事典」なんですが、実際に読んでみてどうでした?

 最初届いたときは、凄いな辞書みたいだな、と。ちょっと読めるんだろうか、という感じだったんです。

 最初にこの話を聞いたときに、この研究所ってなんだろう? 裏に宗教がいるんじゃないかと思いました(笑)。

 研究している人はみな偏っているんじゃないか? と、うがった見方をしていろいろ調べちゃったんですけど(笑)、実はビシっとまとまっていて、見れば見るほどしっかりしている。

 今いろんな話が世の中で動いていて、最新情報が日々入ってくる情報洪水の中で、立ち返る原点みたいなものがなくなっちゃっているじゃないですか。そこに碇を下ろせるというか、それが本の凄さだな、と思いました。

 このまとまっているボリューム感が凄い。家から持ってきたんですど、「重いな〜」って(笑)。この重さが重要ですよね。

 ばら売りして電子書籍化してもいいんですけど、こうやって本にしてまとまるというのは、杭を一カ所に打ち込む感じで、やっぱり本って面白いなと思いました。

ーー 子供の頃、僕は百科事典を読むのが好きだったんですけど、あの喜びが蘇りますね。

 そうそう。いろいろ見てくと、僕の個人的な主張と違うことも書いてあるんですけど、でも凄く公平に見ていこうとしている感じがして、信頼できるなあ、と思いました。

 自分の知のマップのベースキャンプになるんじゃないかな、と思ったんです。

 引き続きこれを読んでいこうと思っています。

ーー そんなに喜んでいただければ。

 本当にビックリしました。最初はインタビューで、「どんなことを言えばいいのかな」と思ったんですが、そんな心配は必要はなくて。

 温暖化も懐疑派とそうじゃない人たちとあって、もちろんホットな話題は両方の意見があって当たり前だと思うんですけど、いろんなことがある。

 そういうときに、インテレクチュアルな人たちがやるべき仕事をビシっと打ち立てて、「ここから話を始めよう」と言える。それができて、凄くありがたい。僕の理解も虫食い状態なんですね。全然わかんないとこもあるし。これを見て、「そういうことか」みたいな学びが凄くある。

ーー 断片的に知っていることがそこで整理されると。

 そうなんですよ。エイズの流行とダムの功罪がどうつながるか、とかね。ペストと環境と歴史の関係とか凄く面白いです。

 普通は、いわゆる「環境」しか頭に浮かばないじゃないですか。だけど、本当に歴史とも繋がっているし、地理とも、コンピュータの技術革新ともつながってくる。

 あと印象に残ったのが「魂の循環」。

ーー 僕も目次をめくっていて「魂の循環」って何が書いてあるのかなと思いました。

 アメリカで環境関連の会議に出ると、「ネイティブアメリカンの知恵から我々が何を学べるのか」というのが、主要なテーマのひとつになっていて、それがスピリチュアリティでは片付けられない。

 見ていけば見ていくほど、ますます彼らの信仰の中に凄く深い意味があったりするわけです。

 そういうのも繋がってくるし、これから人間として僕は仕事を成功させたいと思っているんですけど、同じように仕事を成功させたい人は、これを読むべきなんじゃないかと思います。

(2010年10月12日 株式会社ビオピオにて)

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投稿者:

ともゆき@zubapita

ともゆき@zubapita

作ったモノ 雑誌:月刊アスキー(デスク)、アスキー.PC(副編集長)、インターネットアスキー(編集長)、アスキーPCエクスプローラー(編集長) Webサイト:東京グルメ/ライブドアグルメ、映画を語ろう、本が好き 著書:「Twitter 使いこなし術」「facebook 使いこなし術」 最近は、株式会社ブックウォーカーにて、「BWインディーズ」をやってます。

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