匿名掲示板は是か非か

3月 4th, 2009

 nobiさんのブログより。

私はいろいろな場所で公言しているが、日本の匿名書き込みの文化が嫌いだ。

 この議論になると「そうはいっても、匿名掲示板にも有効な情報があがっていることがある」と反論する人がいるが、それは有害物質にも意外な効能とか、ヒットラーにも人間らしいやさしい側面、といったものと同じ議論。

[From nobilog2: マスコミもブログも、兜の緒を締める頃合い!?]

 nobiさん、米Wired誌にiPhoneについての発言をねつ造されて怒った勢いで、匿名掲示板まで斬ってしまった。おかげで、余計な火の手がもうひとつあがったのだが、そこはnobiさんらしく、建設的な意見交換をMindmeister上で行っている。

 個人的には、日本のネットにも実名・顔出しの文化が定着して欲しいと思っている。当ブログも一応、実名、顔出しでやっている(プロフィール画像が加工されているのは、以前掲載していた写真の評判がよくなかったのと、どうやっても間抜けな自分撮り画像しかできないので)。みんなが、自分の立脚点をあきらかにしながら、意見を表明し交換するようになれば、無駄なケンカや争いは大幅に減って、建設的な意見やアイデアが次々と生み出されていく……というのがひとつの理想だ。

 しかし、「実名だと言いたいことが気軽に言えない」というのも現実。これは「実名で発言するときは、内容に気をつけなければいけない」という事実と表裏一体だ。

【価値のあるものはノイズの中から生まれる】

 みんなが責任を持って発言するようになれば、ノイズは減る。だけど、雑多な面白いものも減ってしまい、ネットはいまよりも退屈なものになってしまうだろう。コンテンツには2つのタイプがある。しっかり考え抜いてぬかりなく構築されたものと、無責任なノリと勢いだけで作ってしまったもの。多くの場合、新しいものは、後者から生まれてきたのではないか? もちろん、ノリと勢いで作られたものは完成度が低く多くはゴミなんだけど、その大量のゴミの中から、少量のすばらしいダイヤモンドが生まれてきた。いにしえのスタージョンの法則にもあるように、なにごとも9割はクズなのだ。

 ノリと勢いと無責任を実名でやることは、不可能ではない。でも、誰にでもできることでもない。秘めた才能があっても、地域、職場、学校というローカルコミュニティに縛られて不自由な思いをしている人は多い。世の中リベラルな人ばかりではない。狭量な人、未来の見えない人、嫉妬深い人が、周囲にひとりいるだけで、その人の可能性は閉ざされてしまいがちだ。周囲の状況と戦い打ち破れるかどうかは、本人の資質だけでなく、環境が大きく影響する。

 そもそも、そんな苦労をしてまで、発信をしたい人はごく少数だ。多くの人がネットで発信しコンテンツを形作るのは、それが楽しいとか、なにがしかの代償行為になるからだ。

 匿名で生まれたコンテンツの代表例は2ちゃんねるの電車男だ。あれが真実の物語か疑う人もいるが、大事なのは、あれが多くの人を引きつける魅力をもっていたことだ。僕自身は、電車男には興味なかったのだけど、はてなのますだには、ときどき感動させられたり、考えさせられたりしている。ネット上の匿名文学、告白文学が育ちつつあることを感じる。それは、アングラかもしれないけど、アングラだからこそ表せる人間の本質がある。

 実名ならケンカがおきない、というのも幻想かもしれない。池田信夫さんが、山形浩生さんや天羽優子さんと言い争っているのを見ると、「あんなに聡明な人たちがどうして?」と思ってしまう点もある。まあ、変に大人ぶらず格好付けないところが、逆にエラいのかもしれないが。

【匿名掲示板をなくせない理由】

 上記の匿名掲示板のMindmeisterに、否定派の意見として、「同様のことをもっと健全にやっているサービスもある」という指摘もあった。確かに、情報収集型のサービスは匿名掲示板でなくてもできる。ただ匿名だと、仕事中に書き込むとか、中の人がリークするということが難しくなる。これも倫理的な問題を含む諸刃の剣なのだけど、匿名掲示板に希少価値のある情報やコンテンツを集める力があるのは否めない。

 匿名掲示板の最大の問題点は、「悪事に使いやすい」ということ。いまや大手サービスで完全な匿名掲示板は存在しない。手続きを踏めば、書き手を特定することができる。しかし、その手続きが壁となって、加害者を有利にし被害者を増やしている。これもまた、「匿名性が情報をリークした人を守る」ことと「匿名性が悪事を誘発する」ということの表裏一体の問題だ。

 ありがちな結論だが、匿名掲示板は単なるサービスに過ぎない。良い面と悪い面の両方がある。便利に使っている人が多く存在するかぎり、匿名掲示板をなくすことはできない。ブログだって現状では多くが匿名状態で運用されている。匿名掲示板をなくすなら、ブログもなんとかしないと。

【いまやるべきこと】

 一番大事なのは、マナー教育。「匿名で人を傷つけるような発言をすることは、人間として恥ずかしいこと」「個人を批判するときは、自分が何者かあきらかにすべし」ということは、僕は常識だと思っていた。しかし、いい大人でも、それが守れない人があまりに多い。

 次にすべきは情報リテラシー教育。「書いてあることは、なんでも鵜呑みにしない」と「書くときは、事実関係を調べてから書く」。この2つ、できる人は当たり前だと思っているけど、世の中にはできない人のほうが圧倒的に多い。僕自身についていえば、概念として理解したのは学生のときだけど、きちんと実践できるようになったのは、出版社に就職して修行してから。その出版社においても、事実関係をきちんと把握しない思い込み原稿があとを立たなかった、まあ、今でも自分が落とし穴に落ちることもある。これについては、死ぬまでずっと気をつけ続けるしかない。

 最近、学校へのケータイ持ち込みを禁止しようという動きが盛んなようだが、そういう臭いものに蓋をするようなことをしても、なにも改善できない。規制すれば、余計に悪化するだけだ。

 セキュリティの分野においても一番大事なのはモラル教育で、それがなければ、どんなに優れたシステムや厳しい規則を作っても、必ず内部から穴を開けられてしまうと、専門家は異口同音に語っている。

 同じように、匿名掲示板やケータイの使用を規制しても、無駄なのだ、きっと。

P.S.

とはいえ、ネットで匿名性を守りながら、発言の信頼性を保証する仕組みは、あったほうが良いと思う。

SSLみたいに認証局が本人確認して、そこで発行されたキーを使って、掲示板にユーザー登録しないと、書き込めない仕組みとか。

すでにベリサインがそれっぽいのを有料でやっているけど、そうじゃなくて国がサービスとして提供する。

って、公的個人認証サービスがすでにあるじゃん! 公的個人認証サービスがオープンIDで認証サービスを始め、2ちゃんねるとmixiと大手ブログ各社がそれに対応すればいい。

SSLみたいに、「対応していないとこは利用しない」という認識が広まれば、それなりに効力あると思うんだけどなぁ。

まあ、認証をIDとパスワードでやるのか? とか、IDとパスワード盗まれたらどうする? 未成年は? などの問題もありますが、検討する価値はあるのでは。

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カテゴリー: IT技術、業界, 日記

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コメントフィード1件のコメント

  1. Tokyo O life - ずばぴたテック » 梅田望夫:日本のWebは「残念」でもいいじゃん

    [...]  先日のnobiさんの件でも触れたけど、日本のネットはほとんどが匿名だし、ブログは個人が意見表明する場と言うよりも、プライベートな日記を公開する場として認知されている。SNSは [...]

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