プリキュアが金田飛び

「かねだ」ではなく「かなだ」

毎週日曜朝の空手の練習から帰ってきて、いつもどおりに、娘のさくらが『Yes!プリキュア5 GOGo』が見たいというので、例によって、さくらを膝の上にのせて、録画を見る。

これまた例によってボーっと見ていたのだが、徐々に異変に気がつく。

なんだかオカシイ。うーむ。こ、これは!

意図的に狂ったパース。あまりに大げさなドUPと、アオリ。キャラクターの輪郭は、基本設定を無視してゆがみまくる。

いったんキャラが動き出すと、猛スピードでシーンが展開。アニメでしか表現できない、もの凄い迫力。これは間違いない。

かなり重度の金田(かなだ)症候群である。

プリキュアを見ていると、ときどき金田系の作画に出会うが、今日の放送(うららの台本を届けろ!)ほど延々と金田走りや金田立ちや金田飛びが続くのは珍しくないか?

つーか、通常はバンクを使い回す変身シーンも、わざわざ描き起こしている?。キャラを中心にカメラが360度グルグル急回転するなど、戦闘シーンも迫力200%増し。何が起こったんだ? エンディングでわざわざ一時停止して、原画スタッフを調べてみる。(この次点で子供は置き去り)

山下とか越智とか、見たことある名前があるんじゃないかと予想したが、まったくなかった。

ただ原画スタッフは異常に多い。20人くらいいる。確かにあの動きじゃ、そのくらいの人数は必要かもしれない。作画監督の篁馨という人が、金田系なのか? そういや、チュチュの原案でセーラームーンの作画監督でもある伊藤郁子も、女性には珍しい金田系だとWikipediaに書いてあった。

所詮、一般視聴者である僕には、これ以上は何もわからないが、ここまでお付き合いくださった読者のために解説しておくと、「金田」というのは金田伊功(かなだよしのり)というアニメーターの独特の作風を指している。

ディズニーでは、ひとりのアニメーターがひとりのキャラクターを描くことで、作品内の作画の統一を図っているが、予算とスケジュールの余裕のない日本のアニメでは、「作画監督」という職種が作画の統一を担う(当時)。余談だが、宮崎駿は「監督」であって「作画監督」ではないのに、自分の映画の6割の作画に手を入れる。その体力がもうないので、数年前に引退宣言をしたらしい。

とにかく、商業アニメ作品では、作画の統一がされているべきなのだが、日本のTVアニメでは、アニメーターの個性のほうが前面に出てしまうことがある。

古い話だが「さらば宇宙戦艦ヤマト」のクライマックスシーンで沖田艦長の幻影と話す古代進がアムロ・レイみたいな顔をしている。安彦良和が作画を担当しているからだ。

で、そのなかでも、最も強烈な個性を発揮していたのが金田伊功。その影響を強く受けたアニメーターたちが、作画スタジオを結成し、スタジオZ5、スタジオNo.1などの名前が80年代のアニメ誌上でよくとりあげられていた。ここらへんについては、以下が参考になる。

WEBアニメスタイル COLUMN

“スタジオNo.1は、当時、金田伊功が所属していたスタジオであり、『新・鉄人』では鍋島修、飯島正勝、越智一裕、山下将仁、演出の貞光紳也らが参加。No.1の前に、金田伊功達が在籍していたのがスタジオZである。そのスタジオZ出身の平山智、亀垣一、そして、荒木プロダクション出身の本橋秀之の3人が結成したのが、スタジオZ5だ。ちなみに「Z5」は「5つめのスタジオZ」の意味だそうだ。両スタジオは金田作画の流れを汲む、メカアクションのエキスパートチームだったのだ。”

ここで言っている「新・鉄人」とは、1980年に放送されたカラー版の「太陽の使者 鉄人28号」のこと。なお、スタジオNo.1には、長崎重信もいた。

金田伊功 – Wikipedia

“ロボットアニメなどにおいて、「金田光り」と呼ばれる独特な動きのビームの表現方法や、「金田パース」というそれまでとは一味違う視点からロボット等を捉えた上で大胆かつ奇妙なポーズを巧みに併せた作画方法を考案し、アニメーションの表現方法に変革を起こした。これに魅せられてその手法を取り入れた、言わば「金田フォロワー」とも呼ぶべき若手は当時から数多く、その多くは現在も中堅・ベテランのスタッフとして活躍している。この事からも分かるように、アクション、メカロボットモノ作品で腕を揮うアニメーターとして有名である。また、少女が主人公の宇宙戦争マンガ『バース』を徳間書店のモーションコミックスで描き、これは後にアニメ化された。この頃が商業的ピークであり、金田ブームと言っても良い現象が業界を席捲した。その後、スタジオジブリで宮崎駿監督作品である『風の谷のナウシカ』、『天空の城ラピュタ』、『となりのトトロ』、『魔女の宅急便』、『紅の豚』、『もののけ姫』の原画を手がけていく。ちなみに『ラピュタ』においては原画頭(げんががしら)という特例な称号を与えられていた(エンディングクレジットでも正式に表記されている)。”

氷川竜介評論集: 金田伊功GREAT

“アニメに「円谷英二」に相当する人物として記憶されている作家はいるのだろうか?ここで自分にはエフェクトの流れでもっとも重要な人物としてかつて一世を風靡したはずの「金田伊功」という名前が浮かぶ。(中略)映像としてのスペクタクル性。集客力を持つ卓越したエフェクト映像。多くの後継者を生んだアニメ界での影響力。こういった点にも円谷との共通点がある。”

金田式.kanada style.

“私が、アニメーターの金田伊功(かなだよしのり)氏の名前を知ったのは アニメーション映画「幻魔大戦」を見てから少し後です。 当時ですが、金田伊功氏などをよく知っていた友人らと話をしていくうちに、 アニメーターと言う職業の方に次第に興味を持ちはじめました。 それからは個人的にですが…特に金田伊功氏、 スタジオNo.1の方々やスタジオZ・スタジオZ5などが関連した映像作品を見て、 作画表現のツボにはまりながら、参加作品などを本当に楽しまさせて頂きました。 これからも作画表現がこうあってほしい!”

金田伊功は、アニメの第一線から退いていて、現在はスクエア・エニックスにいるらしい。(ドラクエやFFのキャラが金田飛びをするのだろうか?)

若いアニメファンは、その名前も知らないという。しかし、その独特の作風は、いまも日本のアニメ業界にしっかりと根付いている。それは、それで良いんじゃないでしょうか。(しかし、アニメネタが続きすぎだね>自分)

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ともゆき@zubapita

ともゆき@zubapita

作ったモノ 雑誌:月刊アスキー(デスク)、アスキー.PC(副編集長)、インターネットアスキー(編集長)、アスキーPCエクスプローラー(編集長) Webサイト:東京グルメ/ライブドアグルメ、映画を語ろう、本が好き 著書:「Twitter 使いこなし術」「facebook 使いこなし術」 最近は、株式会社ブックウォーカーにて、「BWインディーズ」をやってます。